つりがねにんじん (釣鐘人参)
学名 |
Adenophora triphylla var. japonica (A.triphylla ssp.aperticampanulata,
A.triphylla var.kurilensis, A.tetraphylla, A.verticilata) |
日本名 |
ツリガネニンジン |
科名(日本名) |
キキョウ科 |
日本語別名 |
ツリガネソウ(釣鐘草)、トトキ・トトキニンジン、ボタンヅル |
漢名 |
輪葉沙參(リンヨウサシン,lúnyè shāshēn,りんようしゃじん) |
科名(漢名) |
桔梗(ケツコウ,jiégěng)科 |
漢語別名 |
沙參(サシン,shāshēn,しゃじん)・南沙參・四葉沙參、白參(ハクシン,báishēn,はくじん)、鈴兒草、 |
英名 |
Three leaved ladybell |
2007/04/06 薬用植物園 |
2007/05/26 同左 |
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2007/08/30 群馬県浅間高原 |
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2008/08/28 長野県湯ノ丸高原 |
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2023/09/19 長野県入笠山 |
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2011/08/15 長野県霧ヶ峰(八島が原) |
(葉・花枝は互生している) |
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辨 |
Adenophora triphylla には、次のような種内分類群を区別する(ことがある)。
A. triphylla(Campanula triphylla, A.tetraphylla, C.tetraphylla)
ハクサンシャジン var. hakusanensis(A.triphylla var.kurilensis, A.kurilensis)
本州・北海道の高山に産
リュウキュウシャジン var. insularis
ツリガネニンジン var. japonica(subsp.aperticampanulata, A.idzuensis)
シロバナハクサンシャジン f. albiflora
シラゲシャジン f. canescens
シロバナツリガネニンジン f. leucantha
ハイツリガネニンジン f. procumbens
マルバノハマシャジン f. rotundifolia
オトメシャジン var. puellaris 四国(東赤石山)産
シキネシャジン var. sasamotoi
サイヨウシャジン(ナガサキシャジン) var. triphylla
本州(中部以西)・四国・九州・琉球・朝鮮・臺灣・漢土産 『中国本草図録』Ⅴ/2342
シロバナリョウキュウシャジン f. alba
ニオイシャジン var. verticillata(var.angustifolia, A.verticillata)
朝鮮・漢土・ダウリアに分布
ケニオイシャジン f. hirsuta
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ツリガネニンジン属 Adenophora(沙參 shāshēn 屬)には、歐亞に62-65種がある。
A. bulleyana (雲南沙參・西南沙參・泡參) 『中国本草図録』Ⅷ/3830
A. capillaris(絲裂沙參・綫齒沙參・龍膽草・泡參)
陝西・湖北・四川・貴州産 『中国本草図録』Ⅴ/2339
ウスイロシャジン subsp. paniculata(A.paniculata;細葉沙參・紫沙參・圓錐沙參)
華北・山東・陝西・内蒙古産 『中国本草図録』Ⅸ/4353
subsp. leptosepala(細萼沙參) 四川・雲貴産 『雲南の植物』212・『中国本草図録』Ⅷ/3831
A. coelestis(A.ornata;天藍沙參・滇川沙參)
四川・雲貴産 『中国本草図録』Ⅷ/3832・『雲南の植物Ⅰ』238
A. confusa (A.stricta subsp.confusa;昆明沙參) 雲南産。『中国本草図録』Ⅷ/3834
ヤナギバシャジン A. coronopifolia(柳葉沙參)
フクシマシャジン A. divaricata (展枝沙參)
本州(中北部・中国)・四国(徳島)・朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・河北・山西・山東産
『中国本草図録』Ⅶ/3361
A. elata(狹長花沙參) 河北・山西・内蒙古産
マンシュウナガバシャジン(ハナシャジン) A. gmelinii(狹葉沙參・柳葉沙參)
朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・華北・モンゴリア・極東ロシア・シベリア産
『中国本草図録』Ⅸ/4352
キキョウソバナ A. grandiflora
ツクシイワシャジン A. hatsushimae 宮崎産 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
A. jasionifolia (甘孜沙參) 四川・雲南・チベット産 『雲南の植物』212
カヤサンシャジン A. kayasanensis
コウライシャジン A. koreana
A. liliifolioides(A. gracilis;川藏沙參) 陝甘・四川・チベット産 『中国本草図録』Ⅷ/3833
ヒナシャジン A. maximowicziana 四国産
A. morrisonensis (臺灣沙參)
ニイタカシャジン subsp. morrisonensis(臺灣沙參) 臺灣産
タイザンイワギキョウ subsp. ueharae(A.ueharae)
A. nikoensis
var. nikoensis
マリシャジン f. globiflora
ケヒメシャジン f. hispidula
ヒメシャジン f. nikoensis(A.nikoensis f.linearifolia;桔梗草)
本州(奈良・北陸・中部以北)産 『本草圖譜』ひめ沙參(シヤシン)
ミヤマシャジン f. nipponica(A.nikoensis var.stenophylla, A.nipponica)
ヒメシワシャジン var. persicaria
ミョウギシャジン var. petrophila(A.pereskiifolia var.moiwana f.petrophila,
A.petrophila, A.pereskiifolia var.petrophila,
A.pereskiifolia var.moiwana f.linearifolia)
シライワシャジン var. teramotoi(A.teramotoi) 赤石山脈産
ケシライワシャジン f. hispidula(A.teramotoi var.hispidula)
ヤチシャジン A. palustris (沼沙參)
本州(東海・中部)・朝鮮・吉林・遼寧産 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
モイワシャジン A. pereskiifolia(A.moiwana, A.subulata, A.ishiyamae;
長白沙參・興安沙參・濶葉沙參) 『中国本草図録』Ⅹ/4880
北海道・青森・朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・モンゴリア・極東ロシア・東シベリア南部産
ユウバリシャジン car. yamadae 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
A. petiolata(秦嶺沙參) 河南・山西・陝甘産
subsp. hunanensis(A.hunanensis;杏葉沙參・寛葉沙參・南沙參)
華北・陝西・江西・兩湖・兩廣・貴州・四川産 『中国本草図録』Ⅱ/0863
ハナシャジン A. polyantha (糙萼沙參・石沙參)
『中国本草図録』Ⅵ/2865・『中国雑草原色図鑑』224
朝鮮・遼寧・華北・山東・江蘇・安徽・陝甘・寧夏・内蒙古産
コハナシャジン var. glabricalyx(subsp.polyantha, A.obovata;光萼石沙參)
subsp. scabricalyx(A.scabridula;糙萼沙參)
A. potaninii (泡沙參・山沙參・燈花草・波氏沙參)
山西・陝甘・青海・寧夏・四川産 『中国本草図録』Ⅴ/2340
エダウチシャジン var. wawreana(A.wawreana;多岐沙參・華氏沙參)
華北・遼寧・内蒙古産 『中国本草図録』Ⅴ/2343・『中国雑草原色図鑑』225
ソバナ A. remotiflora (薄葉沙參・薄葉薺苨)
ナガバモウコシャジン A. stenanthina(長柱沙參)
華北・陝甘・寧夏・モンゴリア・ロシア沿海地方・シベリア産 『中国本草図録』Ⅵ/2866
subsp. sylvatica(林沙參) 甘肅・青海産
イトバシャジン A. stenophylla(細葉沙參・掃帚沙參) 黒龍江・吉林産 『中国本草図録』Ⅵ/2867
トウシャジン(マルバノニンジン) A. stricta(A.rotundifolia, A.axilliflora, A.argyi;
沙參・南沙參・挺枝沙參)『中国本草図録』Ⅴ/2341
イワシャジン A. takedae
ホウオウシャジン var. howozana 赤石山脈鳳凰三山産
シマシャジン A. tashiroi 福江島・平戸島・済州島産
シライワシャジン A. teramotoi
アツバソバナ A. trachelioides(薺苨・杏葉菜・老母鷄肉)
遼寧・河北・山東・安徽・江蘇・浙江産 『中国本草図録』Ⅵ/2868
コウアンシャジン A. tricuspidata (鋸齒沙參) 黒龍江・極東ロシア・シベリア産
A. triphylla(A.tetraphylla)
ツリガネニンジン var. japonica
サイヨウシャジン var. triphylla
シラトリシャジン A. uryuensis(A.pereskiifolia var.uryuensis) 北海道産
エダウチシャジン A. wawreana(華氏沙參)
ムレイシャジン A.wulingshanica(霧靈沙參) 河北霧靈山産
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キキョウ科 Campanulaceae(桔梗 jiégěng 科)については、キキョウ科を見よ。 |
訓 |
中国では、沙參(サシン,shāshēn,しゃじん)は、広義にはツリガネニンジン属 Adenophora(沙參屬)の通称、狭義には トウシャジン。 |
參(シン,shēn)の字義は、オタネニンジンの訓を見よ。
『本草綱目』に、沙參の根は黄土の地に生ずれば短小だが、沙地に生ずれば長さ尺餘、このように「沙地に宜し、故に名づく」と。 |
李時珍『本草綱目』(ca.1596)沙參の釈名に、「白參呉譜。 知母別録。羊乳別録。羊婆嬭綱目。 鈴兒草別録。虎鬚別録。苦心」と。 |
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和名のツリガネは、花の形から。ニンジンは、太い根を人参(オタネニンジン)に擬えて。
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トトキは、朝鮮語から。朝鮮・対馬などでツリガネニンジン・ツルニンジンなどをトトキ・トトクと呼ぶと云う。 |
『大和本草』人參に「トトキ人參、ツル人參、此二種ハ砂參ナリ」と、沙參に「日本ニテトトキ人參ト云物沙參ナリ、・・・又ツリカネ人參ト云、筑紫ノ野人ハシテンハト云フ・・・」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』8(1806)に、「沙参 ツリガネサウ同名多し ツリガネニンジン トゝギニンジン同名あり ヤマダイコン南部 キキヤウモドキ但州 シヤクシナ江州 ヤマナ アマナ共に同上 シテンバ筑前 ヘビヂヤワン上総 シヤジヤシヤ越中 ビシヤビシヤ城州山科」と。
岩崎灌園『本草圖譜』(1828)に、「沙參(シヤシン) つりがねにんじん」と。 |
説 |
北海道・本州・四国・対馬・琉球・朝鮮・極東ロシア・東シベリア南部・遼寧・吉林・黑龍江・河北・山西・山東・華東・兩廣・四川・貴州・雲南・ベトナムに分布。 |
誌 |
中国では、ツリガネニンジン属 Adenophora(沙參 shāshēn 屬)に属する次のような植物の根を、沙參(サシン,shāshēn,しゃじん)・南沙參・泡參・泡沙參などと呼び、薬用にする(○印は正品)。『中薬志Ⅰ』pp.314-321,『全國中草藥匯編』上 pp.396-398
A. bulleyana (雲南沙參・西南沙參)
A. capillaris(絲裂沙參・綫齒沙參)
ウスイロシャジン subsp. paniculata(A.paniculata;圓錐沙參・紫沙參)
ヤナギバシャジン A. coronopifolia(柳葉沙參)
A. liliifolioides(百合葉沙參・川藏沙參)
モイワシャジン A. pereskiifolia(濶葉沙參)
A. polyantha subsp. scabricalyx(A.scabridula;糙萼沙參)
A. potaninii (泡沙參・山沙參)
ナガバモウコシャジン A. stenanthina(長柱沙參)
〇トウシャジン A. stricta(A.axilliflora;沙參・挺枝沙參)
〇ツリガネニンジン A. tetraphylla(輪葉沙參・四葉沙參)
エダウチシャジン A. wawreana(華氏沙參)
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なお、南沙參に対し北沙參と呼ぶものは、ハマボウフウ。 |
『本草綱目』人參(オタネニンジン)の集解に、「偽る者は、皆な沙參・薺苨 (セイデイ,jìnĭ,せいねい)・桔梗を以て根を采り、造作して之を乱す」と。なお、薺苨はアツバソバナ A. trachelioides。 |
日本では、『延喜式』人参にカノニケクサ・ニコタクサとあり、多くの産地を記す。
しかして貝原益軒は『大和本草』に「延喜式日本諸州ノ土産ニ人參アリ、是亦砂參ヲ以人參トセシナルヘシ」といい、小野蘭山は『本草綱目啓蒙』に「此説近シ」という。 |
古来有名な山菜。『本草綱目啓蒙』に、その根生葉を「江州ニテシヤクシナト名ヅケ俾民蔬トシテ食ふ」と。根も、ゆでてから水に晒し、苦みを抜いて食う。
俗謡に、「山でうまいのはをけらにとゝき 嫁にやるのも惜しゅござる」(武田久吉『民俗と植物』に信州の俚謡という)と。 |
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